日本の産業の空洞化

日本の産業の空洞化

企業の成長といっても、むやみな拡大志向は危険です。
企業買収で一気に規模拡大を図ろうとした企業が、事業を把握する力がなかったために巨額の損失を計上し、企業存続の危機に陥るといった事例は多く目にします。
幸い、当社グループは経営の健全性を確保し、実力が伴った成長をめざしています。
世界中に事業拠点を広げているとしても、製造面でいえば、技術や技能を鍛えてきた国内生産拠点がマザー工場として各拠点の模範となっていることが多いです。
販売やサービスに関しても国内で磨いたノウハウ、分厚い人材がグローバル展開を支えています。
実力を高めながら成長してきたのです。
日本が堅実だと評価される所以です。
その力をさらに高めようというのですから、なかなか大変です。
まずは「職場の力」を高めることです。少々の苦労も、仲間と一緒に、明るく支えあって乗り越えていける、そんな職場があってこそ、良い仕事ができます。
個人プレーに頼るより、チームカで勝負する、それが日本らしい戦い方です。

会社の強みや弱みの見つけ方、分析の仕方

 

会社の強みや弱みの見つけ方、分析の仕方

「じっくり育てた力」が出合うとき
夏本番だ。セミの声がこの季節を盛り上げる。子どものころ、地面から出てきた幼虫を探して部屋で羽化させるのが昆虫好きの私の楽しみでした。殻を脱いだばかりの姿がじつに美しい。地味なアブラゼミも真っ黒なクマゼミも、最初は真っ白なんだよ。お子さんの自由研究にもおすすめだ(部屋は暗くしてください)。

夜にしての華麗な変身だ。だけどセミにしてみれば、5年もかけて地中でじっくり体を作ってきたわけで、「見えないところで苦労してた」と言いたいところでしよう。

この「じっくり」という言葉が私は好きだ。「休まず、一歩一歩堅実に」、こんな意味合いだろうか。環境が良いときも悪いときも、こつこつ地道な改善を粘り強く積み重ねる。この実直さが私たちの職場の強みで、多くの事業を育ててきた力だと思っている。「じっくり」取り組むからこそ、少々の波風にも動じない強さが身につくのだ。

しかし、育てた事業も今のままでいつまでも通用するわけではないのが辛いところだ。AI(人工知能)などの新しい技術も活用し、新しい顧客価値を提供しないと生き残ってはいけない。もちろん、外から技術や設備を買ってくれば、ボンと新しいことができるほど簡単ではありません。借り物の力で経験の少ない世界に踏み出すのは危険だ。「挑戦にはリスクがつきものだ」。こんな勇ましい議論に出合ったら、「自らの実力を冷静に評価しないと思わぬ痛手を被るよ」と、働く側としてはクギを刺したいところだ。

粘り強く、まじめなところが強みと言ったが、もうひとつの強みは、社内のいたるところにじつにさまざまな分野で一流の技術やノウハウがあることだ。会社も、経営方針に事業間の連携をいっそう進めることをうたっている。これまで出合うことのなかった、「じっくり育てた力」が合わされば、無理をしなくても本物の新しい力が得られるということだ。
「組織の壁を越えた企業行動を育てるのは経営トップの責任だ」。事業の将来に期待しながら、こんなことも繰り返し会社に申し上げている。

さて、今晩あたり、近くの公園でセミの幼虫でも探してみましようか。子どもたちのようにうまく見つけられればよいのだが。

 

ワークライフバランスと企業人のジレンマ

ワークライフバランスと企業人のジレンマ

 

いつも「仕事が優先」とはいかないジレンマ

通勤の時、小さなお子さんを抱えた若いお父さんが乗ってこられます。保育園や幼稚園に送ってから出社されるのでしょうか。ビジネスカバンにお子さん用のバックを抱え、電車も混み合っているので大変そうです。「頑張って下さい!」と心の中で声をかけます。われわれの職場でも、出産をサポートするために、5日間の「配偶者出産休暇」や年休を活用し、まとまった休みを計画される人が増えています。「育児は妻が主役で夫は補助」という社会通念は大きく変わりつつあります。

 

一定期間、家事や育児に専念しようと、育児休職の取得を考える男性も増えています。取得された人からは、「素晴らしい時間を過ごせました」とお聞きます。しかし、「上司や職場の理解は得られるのか、迷惑をかけるのではないかと心配で、ためらってしまいました」なんて実情も多いようです。女性が育児休職に入るときと同様に、業務の調整や人材補強など人事的な配慮がないと制度の活用は進みません。ここは会社のいっそうの努力を求めるところです。

 

保育園や幼稚園にお子さんを預けて復職してからも苦労は続きます。熱があればその日は保育園や幼稚園に預けられず、どちらかが休むことになります。病児保育施設の普及はまだまだこれからです。
子育ては予定外の出来事の連続です。朝は元気だったのに、急に体調が悪くなって、保育園や幼稚園から「迎えに来てください」と電話が入ることもあります。「思ったように仕事が進められず、気も使いますが、応援してくれる仲間の理解はうれしいです」、そんな職場でありたいと思います。

 

仕事を続ける上での苦労は育児だけではありません。いつも「仕事が優先」というわけにはいかないのです。家族の介護や看護、ご自身の健康問題、周囲との人間関係、負担の大きさや深刻さはそれぞれでしょうが、実にさまざまな事情に折り合いをつけながら、時には何かしらの我慢もしながらわれわれは仕事に向き合っています。

 

生活と仕事のバランスを難しくしているのは、とにかく働く時間が長いことです。ここを改めないと話は始まりません。長時間労働の是正はわれわれの望む働き方の出発点です。

 

「自分の時間、家族や友人と過ごす時間をもっと大切にしながら働きたい」、これがわれわれの思いです。そのほうがもっと「良い仕事ができる」、これは働く者の誇りです。